コミュニケーションはキャッチボール

うまくいくキャッチボールの条件

2 待つ。「間」をとる

実際にキャッチボールを始めてみると、すぐに息が合って楽しくキャッチボールができる相手と、そうでない相手がいます。実際に、いろいろな人とキャッチボールをやってみると、それは顕著にわかります。なんというか、「間」が不均等になってしまう。リズムがとれないのです。

間髪入れずに、ボールを投げ返してしまったり、
長くボールを持ちすぎてしまったり、
相手が投げるのを待てずにボールを自分から取りに行ってしまったり、、、。
そういう人は、たいてい、コミュニケーションも同じような状態にあるようです。

相手の答えを聞くのが怖くて、自分で言ってしまったり、
相手が話し終わる前に口を挟んでしまったり、
必要以上に考え込んでなかなか口を開こうとしなかったり、
沈黙を恐れて、むやみに話し続けてしまったり。

もっともよく見られるのは、相手が投げてくるのを「待てない」こと。
もうひとつは、いったん受け止めたボールを感じる「間」をもてないことです。
受け取るが早いか、ろくに相手の状態を確かめもせずに投げ返してしまう。まるで、一刻も早くボールを手放してしまいたいとでも言わんばかりに。最初に投げたほうは、ボールが戻ってきたとしても、相手にちゃんと受け止めてもらった気もちがしません。

感覚がひどくずれているか、鈍っているか。あるいは、受け止めたボールの重みや肌触りをしっかりと感じ取るだけの余裕がないのか。いずれにしろ、過度に緊張してしまうことが理由のひとつでしょう。

すなわち、相手からの自分に対する評価への恐れからくる緊張です。

うまく投げられているだろうか。
ちゃんと受け取ってもらえるだろうか。
うまく受け取れるだろうか。

キャッチボールが苦手な人は、そんな心配をしながら、つまり相手の「評価」を恐れながら、キャッチボールをします。だから、緊張します。自分がどう見られているか、ということに気をとられ、自分が相手を感じる余裕をもつことができないのです。

もうひとつの代表的な理由は、キャッチボールをすること自体よりも、交わすボールの中身のほうを重視してしまうことだと思います。かつてのわたしのように、言葉にこだわり、言葉を選ぶあまり、キャッチボールを忘れてしまうのです。

でも、言葉というのはヴィークル、乗り物です。互いの気もちを乗せる乗り物です。わたしたちは気もちで動く生き物ですから、どんなに選び抜かれたすばらしい言葉が投げかけられたとしても、その投げかけられ方が、自分を大切にしてくれないものであったら、言葉そのものも、受け取る気にはなれません。
キャッチボールの目的は、キャッチボールを楽しむことです。コミュニケーションも同じです。

コミュニケーションを、意思の疎通を図るためとか、この案件をまとめるためとか、親しくなるためとか、手段として考えている限り、その目的もまた達成されません。わたしは、キャッチボールのデモンストレーションの実践を通じて、このことを改めて実感しました。

コミュニケーションで大事なのは、それを交わすことが気もちよく感じられることです。

伊藤守著『コミュニケーションはキャッチボール』(ディスカヴァー刊)より

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