Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2018年7月13日(金) 「鍵」

数年前からスマートロックというのが売られていたのですが、新型がでる発表がありました。スマホと連動して鍵が開けられるという、便利そうなもの。そういう新しいものを見るといつも欲しくなります。スマートリモコンとかも最初に聞いたとき、ずいぶん心揺さぶられました。ただ、お値段が結構高い。それで諦める。またニュースで見て、欲しくなる。でも値段を見ると諦める。その繰り返しをしていると、さらに新しいものが出てきて、目移りする。そうやって悩むのが楽しいんでしょうね。何か問題が解決されそうっていう気配を感じて、想像することが楽しいんだと思います。とはいえ、鍵を忘れる奥さんのためにスマートロックを導入することと、毎朝奥さんが鍵をもっていることを確認するのとどっちがいいんでしょうね。鍵、財布、携帯、定期。。。みなさん、忘れないためにどんな工夫しているんでしょうね。たぶんスマートロック導入以外の手があるんだと思います。(T)

父親が前門の虎、後門の狼たる会社へ出かけて行った後、母親はベランダで洗濯物を干していた。家計が逼迫しているが故の緊縮財政政策の一環として、午前中はクーラーを止め、扇風機だけが回っていた6年前の残暑の厳しい頃の話である。「鍵はちゃんとかけること」。生まれた時から日常的に父親が散々叱られているのを見続けたからであろうか。「鍵はちゃんとかけなければならない」。歩き始めたばかりの長男が、開けっ放しとなっているベランダの引き戸を突如閉め、鍵を掛けた。さらにピシャッとカーテンまで閉めたのであった。笑い声をあげる長男。「開けて!」と叫ぶ母親、焦る母親。もしも父親がその姿を見ていたら、絶対的な虚構の権威である父親を叱り続けるからだとほくそ笑んでいただろう。いいお灸だと。だが、しかしその場には父親はいないのである。カーテンの閉まったベランダのドアで対峙するは、母親と人間の言葉なんぞ全く解さない1歳児のみ。さらに長男は籠城を決め込んだらしく、部屋の奥に引っ込んでしまったのである。長男を籠絡して鍵を開けさせることなぞ不可能。豊臣秀吉公であるなら、備中高松城の水攻め、鳥取の飢え殺しといった攻城策を持つが、携帯電話を部屋内に置きっ放しの母親は立て籠もる長男を無事に健康に開城させる策を見出せず、万事休すのであった。だが、活路は住んでいた階にあった。1階に住んでいたため、ベランダを乗り越えて外に出ることは可能であった。とにかく連絡をばと、なんとかベランダを乗り越え隣の部屋のインターホンを鳴らす。隣の奥様は在宅であった。電話を借り、まず父親を緊急招聘。その後に鍵をなんとか開ける手立てはないかと、各所に電話するもの、マンションの管理会社は定休日であり、鍵のレスキューも到着は15時過ぎにならないと来れないのだという。時刻は10時30分。残暑は極めて厳しく、この日も30度は超えそうであった。室内に水分も特に用意しておらず、当然長男は冷蔵庫を置けることはおろか、水道を飲むことすら不可能。さらにはカーテンは閉まっているものだから、中でどうしているかすら皆目わかならい。5時間も待てないのである。もはや119番しかない。100メートル先にある消防署より、サイレンを鳴らした消防車と救急車出動。地域はいたって平和だったのか、目と鼻の先の騒動だから、休憩中と思われる隊員も徒歩でわらわら集まってきた。さすがはレスキュー。ベランダの窓を叩き割り鍵を開け、瞬く間に籠城していてケラケラ笑っていた長男を確保した。「こんなことですみません」としおれている母親に対し、「これは呼ぶべき案件です」と実に有能なレスキューなのである。父親は全てことが終わった後に帰宅する無能であり、だがしかしガラスの修理代は氏の給料から支払わなければならないのであった、当然。(HK)

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