コミュニケーションはキャッチボール

キャッチボールをスタートさせる条件

完了するコミュニケーションとはどのようなものでしょうか?
心地よいキャッチボールが成立する条件とはどのようなものでしょうか? 
欠かせない条件は、4つあります。

1 どちらかが「始めたい」という意図をもつ
2 相手の同意をとる
3 向かい合って立つ
4 適度な距離をとる


1 どちらかが「始めたい」という意図をもつ

キャッチボールは、誰かが最初に、「やりたい!」と思い、誰かに、「やろうよ」声をかけなければ始まりません。コミュニケーションも同様です。待っている人ばかりのところでは、コミュニケーションは起こりません。誰かの「意図」「欲求」が必要です。


2 相手の同意をとる

キャッチボールはひとりではできませんから、やりたいと思ったら、誰かを誘うことになるのですが、このとき、力や立場に任せて無理やりいやがる相手を誘ってもうまくいきません。相手の準備ができていないうちに、いきなりボールを投げても、うまくいきません。相手の「同意」をきちんととること、これが次に大事なことです。

この「同意」は、キャッチボールを続けることに対する「同意」でもあります。少々手元が狂って悪送球になってしまったり、だんだん熱くなって強いボールの投げ合いになってしまうことがあったとしても、途中で勝手にやめない、という同意です。

途中で意見が合わなくなったり、感情的になってしまったからといって、怒り出したり、黙り込んでしまったり、逃げ出してほかで陰口を言ったりする相手とは、安心して、「腹を割った」コミュニケーションを交わすことはできません。


3 向かい合って立つ

さて、キャッチボールを始める同意がとれたら、早速「位置」につきます。向かい合って立つわけです。

いうまでもなく、キャッチボールは、向かい合って行います。後ろはもちろん、横を向いたりしていてはうまくできません。コミュニケーションも同様です。

あたりまえのことのようですが、人と正面から向かい合ってコミュニケーションのとれる人は、そうはいません。斜に構えてみたり、腕を組み、足を組んでみたり。

鎧をまとうことなく、人と真正面から向き合える人は、ありのままの自分自身と向き合える人でもあるようです。


4 適度な距離をとる

キャッチボールを始める際に重要なことのもうひとつは、適度な距離です。キャッチボールは、遠すぎても近すぎてもできません。

この距離は、相手との関係やキャッチボールのスキルによって異なり、いつでも通用する正解というものはありません。それは、感覚で測るものです。たとえば相手が幼い子どもなら誰でもかなり近づいてボールを投げるでしょう。キャッチボールに不慣れな人とは、ふつうよりずっと近い距離でないとうまくやりとりできません。

相手を観察し、相手が許容する範囲まで近づく、自分の緊張の度合いも測りながら、近づく。この感覚が働かないと、距離をとりすぎたり、近づきすぎたりして、いずれも心地よくボールをやりとりすることができません。

実際によく見受けられるのは、まったく距離をもてなくて、キャッチボールができなくなっている状態です。

子どもを自分の分身のように思い込んでいる母親は、子どもとコミュニケーションを交わすことができません。部下を自分の手下のように思い込んでいる上司は、部下とコミュニケーションをもつことができません。

コミュニケーションには距離が必要なのです。

ただし、なかには、いっさいボールを受け取れない人もいるでしょう。そうした場合は、近づいて、ボールを投げるのではなく、手渡しするぐらいから始める必要があります。やがて、少しずつ距離をとりながら、キャッチボールらしくなっていきます。

適度な距離をとって相手と向かい合い、キャッチボールを始める意図をもって、相手の注意を促し、同意をとって、キャッチボールを始める ─── これらは、キャッチボール、すなわち、コミュニケーションの最低限の約束事です。この約束事のいずれが欠けても、コミュニケーションは成り立ちません。

伊藤守著『コミュニケーションはキャッチボール』(ディスカヴァー刊)より

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