著者は自転車選手。25歳の若さで、睾丸癌が肺と脳に転移した。生存率はかぎりなくゼロに近いと思われたが、病いを克服したばかりでなく、世界最高峰のツール・ド・フランスで奇跡的な復活優勝を遂げた。
マイヨ・ジョーヌとは、ツール・ド・フランスで、そこまで通算1位の選手が着る栄光のジャージのこと。英語の原題は『It's
Not About the Bike.』(自転車の話じゃないんだ)です。読む人によっては、意志の力と神経心理免疫学について考えるかも知れません。また、自分は病気とどのように向かうだろうかと。ある人は、家族や恋人や仲間との愛について考えるかも。また、これは人生の目的についての本だと思うこともできます。人生を旅にたとえる人も多いですが、彼は「苦しみながら山道を登り続ける自転車レースと同じだ」と述べています。生意気で攻撃的だった彼が、重病を経て、人間的に成長していく学習のプロセスを扱った本と見ることもできるでしょう。
僕自身が一番、印象に残ったのは、彼が1999年のツール・ド・フランスで復活した時に、「あれはドーピングだ」とか「癌治療がレースに優位に働いた」などと、批判したり、皮相的なコメントを続けた人々、そしてメディアの体質が悲しいな、と感じたことです。他人の成功や幸福、そこに至るまでの努力を祝福できるかどうかで、人生の価値がずいぶん変わってくるような気がしました。
1999年に奇跡的な初優勝を遂げて以来、今年(2003年)7月、ランス・アームストロングは、ツール・ド・フランス5連覇を達成しました。気持ちがめげそうになった時に読むと、あきらめなくても良いんだ、と思えること請け合いです。
|