【ディスレクシアの症状】

今回はディスレクシアの典型的な症状と簡単な対処法をご紹介します。

●読み
ディスレクシアの人は、文字をよく混同したり（bとd、pとbなど）、単語を逆から読んだりしてしまいます（cat をtacと読むなど）。また、文中の簡単な単語をしばしば抜かして読んでしまいます。単語や文字を反対方向から読んでしまうことと、短い単語や文字を抜かして読んでしまうことは、同じくらい頻繁に起こります。
ディスレクシアの人は、単語や文の順序を識別する能力にやや混乱をきたしており、視覚的記憶と音声的記憶が非常に弱いため、読みに関する障害が起こりやすいと言えます。

●書き
ディスレクシアの人は文字を書くのに手間取る人が多いのも特徴です。書く能力にも、読むのと同じ傾向がみられ、ある種の単語を逆から書き、bとdを頻繁に混同します。ディスレクシアの人の中には、手書きよりもタイピングの方が容易だという人もいますが、逆の場合もあります。また、「鏡文字」も、ディスレクシアの人には珍しくありません。

●つづりと文法
正しいつづりができるディスレクシアの人もいますが、一般的にはそうでない場合の方が多いようです。ディスレクシアの人には、つづりに関しても単語と文字の反転がみられます。正確なつづりができないのは、記憶力の低さと不安定な音声認識のためです。
通常、つづりの能力は、記憶力と正確な音声認識が土台になっていますが、ディスレクシアの人は、この２つの力が弱いとされています。しかし、正確なつづりを書く能力は、長期的に見ると改善します。文法に関しては、大文字の使用方法、文の区切り方、句読点の付け方などについての指導が必要です。文法の問題はディスレクシアに伴う障害ですが、十分改善が見込めます。

●空間認識
ディスレクシアの人は、前後左右の感覚や方向感覚が低いとされています。そのため、大きな建物の中や、初めて訪れた場所では迷いやすく、何らかの混乱が生じます。ディスレクシアの人は、左右や東西南北についての直感的な感覚が低いようです。しかし、それを補う指導があれば、空間認識や方向感覚の問題は、長期的には改善します。

●計算と時間
計算に関する障害は、「ディスカルキュリア」とも呼ばれます。ディスレクシアの人は、計算をする際に数字を逆にしてしまいます。また、何時何分といった時間を判断することや、１５分過ぎと１５分前などの区別が苦手です。しかし、これにはデジタル表示の時計が役に立つでしょう。

●会話
ディスレクシアの人の多くは、しゃべるのがゆっくりで、何らかの言語障害を抱えています。しかし、これも長期的には改善します（ただし、言語治療が必要な場合もあります）。通常、ディスレクシアの人は、相手の言葉や質問に答えるまでの時間が長くかかります。これは、相手の言葉や質問を理解するための処理に時間を要するためです。しかし、気を散らす要素や周囲の騒音を取り除くことで、症状は良くなります。ディスレクシアの人は、気が散りやすいため、周囲の騒音や気を散らしてしまう要素をできるだけなくすだけで、状況は大きく向上します。これは、ディスレクシアの人が抱える集中力の問題についても有効です。

●まとめ
ディスレクシアを治療することはできません。しかし、適切な指導と継続的な支援に加えて、本人に自信を持たせることができれば、ディスレクシアの子どもたちは十分に学習することができます。ディスレクシアの人の多くは、大学にも行き、障害も乗り越えています。ただし、ほかの学習障害と同様に、早期の処置が重要です。ディスレクシアを抱える著名人は大勢います。トーマス・エジソン、アルバート・アインシュタイン、トム・クルーズ、ハリー・ベラフォンテ、ジョン・Ｆ・ケネディ、ジョージ・ワシントン、ハンス・クリスチャン・アンデルセン、アガサ・クリスティーといった人たちもディスレクシアです。ここに挙げた人たちは、ほんの一部に過ぎません。