膨大な資料を縦横無尽に駆使し現在を読み解く「知の巨人」立花隆がどのように情報を整理し、そしてその秘書はどのような役割を果たしているのか、という興味から読み始めた。一部「家政婦は見た」的ではあるが、おもしろかった。
意外なことに特別なハイテクがあるわけではなく、ひたすら資料を読んで自らの頭の中で再構成したものを締め切り間際に「えいやっ」とアウトプットするという当たり前すぎる光景にに拍子抜けの感があった。ブラックボックスはブラックボックスのまま残っている。むしろ人間の知的作業の不思議さに改めて新鮮な感動さえ覚える。
私にとっては他人の本棚を眺めるという行為は、見てはいけないものを見るようなスリリングな快感を感じる。一見、好奇心のおもむくままに収集された書籍が全体としてどのようにその人の中で統合されるのか、と想像することにとても興味がある。自室の本棚を眺めながら自問することもしばしばある。そのような楽しみを持つ人にとってはお勧めの一冊である。 |