文章の書き方を本を探して、偶然見つけた本だった。ぱらぱらとめくったところに出会ったのが、この一文「直接人と会って話をしましょう。今や、それができること自体が大切な武器になる時代が来ているのですから」だった。思わず買ってしまった。フリートークは、台本なしで話すけど、それなりの目的に向かって会話を進行するテクニックだ。目的は「盛り上げたい、近づきたい、聞き出したい、伝えたい、断りたい」といったありふれたものだ。でも、そんな会話の目的に意識を向けて、なおかつ実践的に書いた本は見たことがなかった。「フリートークは鍛えればどんどんうまくなる」と著者は言う。しかし「フリートークの本質は、自分の置かれたポジションを考え、どういったタイミングで的確な言葉がだせるかにある」とも著者は述べている。そんなことが鍛えればうまくなるのだろうか?
著者が読者に提供するのは、人の行動パターンの分類だ。それは単純だが、効果的な分類だ。例えば「盛り上げる」には、「うなずき手」が重要と導入し、「でしゃばり」や「ボケ」と「つっこみ」の説明をする。どれもこれも普段使っている簡単な言葉や概念で、人の行動パターンを的確に表現していく。フリートークにはいくつか目的があるが、なかでも「聞き出す」が一番面白かった。安心感を与えてリラックスさせてから、聞き出すとか、ちょっとノセるとか、ケナして、よいしょするとか、あたり前のことしか書いていないのけど、文章全体から伝わってくるのは、著者が意識してフリートークを実践しているなという印象だ。著者はテレビドラマの脚本を書いたり、演出したりして人と人のコミュニケーションに対する観察を真剣にやってきたから、そういった印象を伝えることができるのだろう。
最後に、いくつかフリートークのための練習問題がある。その中に、「記号や肩書きではなく、ひとりの人間として接するところからフリートークは転がっていくのです」と書いてある。
薄い本なので、本棚にあるのが目につくと、たまにぱらぱらとめくることがあるけど、どこを読んでも、また新鮮に読める本だ。 |