21世紀は「脳の世紀」と期待され、ミレニアムプロジェクトでは莫大な国家予算が脳研究のためにつぎ込まれている。言うまでもなくわれわれが脳の神秘に魅せられるのは、美に対する感動、愛に満たされた感動、精緻な哲学的思考、今日は素晴らしいと感じられる意識、などのヒトの精神活動が脳の産物であることを知っているからである。筆者自身も高校生の頃、そのような好奇心から脳研究を自分の仕事としようと考えたが、大学生の時、現状を知って早々にあきらめてしまった。脳の研究が進んだと言っても、とてもこのような究極の問題に答えられるようなレベルでないことも事実であり、研究者がそのような野心を持つのはまだまだ先のことであると筆者は考えていた。本書は美しい本でありそれだけでも所蔵する価値があるが、なにより野心的な執筆者の究極の問題に対する現状での最大限の挑戦である。高校生の頃を思い出しながらわくわくと読み進んだ感動的な1冊である。
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