『惨敗―2002年への序曲』
「1勝1敗1分」という一言を聞いた瞬間、著者は3戦全敗を覚悟した。国と国との代理戦争とさえよばれる4年に1度の大イベントだ。戦争にのぞんで、がんばりさえすれば負けても引き分けても良いと、チャレンジ精神を無視したような発言をする大将・将軍がどこにいるだろうか。しかも初出場の後進国の分際でだ。
なぜ彼らは、いや日本は、いや我々は勝てなかったのか? 圧倒的に経験が不足している監督の就任、決定力不足を知りながら直面されなかったもの、組まれたテストマッチのおそまつさ等々、怠惰で無自覚な指導者や協会幹部への実名での批判は挑戦的だ。それを容認したマスコミと我々へのフィードバックも加えて、ときに感情過多とも思える1行1行に、著者のこの競技への愛情がほとばしる。
結果として的中してしまった著者の予感だが、4年前の惨敗のあやまちを繰り返さず、今日まで我々はやってこられたのだろうか? その結果はあと数週後にでる。ジョホールバルからトルシエ新監督決定までをリアルタイムで綴った本書。今だからこそ読んでおきたい一冊だ。
『2002FIFAワールドカップ 公式ガイドブック』
楽しく観戦するための予習に『公式ガイドブック』は欠かせない。両開催国首脳や連盟首脳によるお言葉からはじまり(その辺りにころがっている退屈なホームページのような…)、注目選手への新鮮味のないインタビュー、おきまりの各国選手のデータ集等々、“公式”という名に恥じない型どおりの構成だが、何よりプレーの一瞬一瞬をとらえた写真がすばらしい。読み物としては、トルシエ、ヒディンク日韓両代表監督の対談が、両国の現状を映し出して、圧倒的におもしろい。テレビ観戦のお供にもぜひ1冊お手元にどうぞ。 |