1945年8月、焦土と化した日本に上陸した占領軍兵士がそこに見出したのは、驚くべきことに、敗者の卑屈や憎悪ではなく、改革への希望に満ちた民衆の姿であった。勝者による上からの革命に、敗北を抱きしめながら民衆が力強く呼応したこの奇跡的な「敗北の物語」を、米国最高の歴史家が描く。(岩波ブックサーチャーより)
本書は、米国の日本研究の第一人者、マサチューセッツ工科大のジョン・ダワー教授による、1999年のピュリツァー賞受賞作だ。名著『吉田茂とその時代』が、戦前戦後の政治屋や官僚どもを主役としていたのとはうって変わって、本書では、街をさまよう孤児、大陸からの引き揚げ者、闇市に集まる人々など、さまざまな庶民の具体的な生活が、極めて低いアングルから書き込まれている。
外国人の書く日本の歴史書(日本人論ではない。念のため)にどんな意味があるのだろうか?どうせ彼の国のために色眼鏡越しに都合よく書かれたものだろう?との思いを持っていたが、本書は違う。これは、日本人自身には決して書けなかったたぐいの、しかも極めて感動的な一冊だ。とともに、このような歴史書が我々の手で書かれなかったことに嫉妬すら感じる。
といっても、大部でもあり、題材も題材だ。誰にも奨められるとは思わないが、いつの日かこの手のテーマがあなたの側を掠めることがあったら、ぜひ思い出して、読んでみてほしい。
叙述されているのは、敗戦からサンフランシスコ平和条約締結へと、我々の父母や祖父母たちが現実に生活していた時代だ。読み終わって、日本人そのものや現代史だけでなく、彼らに対して、より以上の共感をもって接することができるようになれるのは確実だ。 |