目に見えぬ神々に守られた、平和な超古代の日本。南方から侵入して来た、対立する2種類の、目に見える神々“亜神”と“威神”。亜神は善を好み聖を欲し平和を望む、威神は悪を好み魔を欲し破壊を好む、という。はたして、人の心は善を求めるのか、それとも悪により惹かれるのか?また、姿を隠してしまった、目に見えぬ神々の真意は?
『イティハーサ』は、1986年から連載が始まり、13年かかって完成された、超古代ファンタジー漫画だ。連載中もけっこう気にして読んではいたが、こま切れに読むのと異なり、全巻を通して読むことによって、こんなにすばらしい話だったのかと認識を新たにした。有名なラスト数ページも、さらに重みを感じ、感動を新たにさせられた。そうだよ、「話すことがたくさんある…」よ、なア。
この感動はどこから生まれてくるのだろう?漫画という技法自体が持つ豊かな表現力のせいなのか、それとも作者の、何かを「伝えなきゃ」という熱い思いからなのだろうか?
緻密な描線で描かれたキャラクターや風景の、イメージ的すばらしさはもちろん、作者の言葉に関する感受性が抜群だ。セリフ・モノローグだけでなく、真言告(まことのり)、波長(ひびき)、陽石(あかいし)、神鬼輪(じんきりん)、戎士(じゅうし)、真魔那(ままな)等の単語までがセンスを感じさせる。ちなみに著者=水樹和佳子は、現在長編小説を書いているそうだ。大いに期待したい。
…が、とりあえずだ、いいから何も言わずに『イティハーサ』を読んでみなさい!あのラストシーンにこれから出会える人は幸せだ。 |