サブタイトルにもあるように進化論的観点から医学問題を考察したおもしろい本です。個をつきつめて分子、遺伝子まで到達した現在、もう一度全体としてとらえ直す統合的視点が医学においても求められています。進化論から眺めてみると。病気も必要があって残っているんだね、とか、環境の変化が早すぎて淘汰される暇がないとか、いろいろ新しい視点とちょっと気が楽になる感じなどが、読後に残ります。
特におもしろかったのが老化について考察した「老化の多面発現の理論」。若いときにほんの少しでも利益をもたらす遺伝子であれば、たとえ後々老化を引き起こすことになろうとも進化の中で保存されることとなるだろう、というもの。例えば骨が速く治るようにカルシウムの代謝を変える遺伝子は、例え後に動脈硬化の原因になろうとも、とにかく狩猟時代に若いときに生き残るために有利に働いたので保存されることになる。閉経についても同じ様な考察がなりたつ。このように老化が、若いときの活力のために払われる代価だというのであれば、われわれはそれを受け入れるほかないであろう。 |