ラーメン通といわれる人は、店構えを見ただけで美味しいかマズいか大体判断できるといいます。本好きな人も装丁、帯コピーや書き出しで判断する「勘」を日々養っておられることでしょう。「馬車が、また大きくひとゆれゆれて、マリア・メリウェザーとヘリオトロープ先生とウィギンズは、はげしくからだをぶつけあい、ため息をつくと、すわりなおしました。」というこの本の書き出しを読み、いかにも可愛らしい挿絵を見たとき、いかにもありがちな少女向け「小公女」系の本を掴んでしまったもんだわい、と苦笑しました。19ページまでは退屈でした、正直いって。ところが20ページで私の予見は見事に裏切られたのです。迷路のような屋敷を舞台に、何代もの登場人物のからみ合う運命を、ひとりの少女が、信じる力と勇気をもって切り開いてゆく、骨太のファンタジーでした。これを少女小説と敬遠してはソンですぞ。「くまのプーさん」「ピーターラビット」の石井桃子の翻訳は、一文一文磨き抜かれていて、大変読みやすく仕上がっています。
岩波少年文庫
まぼろしの白馬
ISBN:4001121417
エリザベス・グ−ジ;石井桃子
岩波書店 1997/05出版
19cm 325p
[B6 判] NDC分類:K933 販売価:\700(税別) |