帯には「『指輪物語』、『ナルニア国物語』、『はてしない物語』に熱中した全ての人に…」とありますが。トビラの引用がいきなりミルトン(渡辺淳一ではないです)の『失楽園』から「――この狂乱の深淵に向かって、慎重な悪魔は地獄の縁につっ立ったまま、じっと行く手を凝視し、自分のこれからの旅路のことを思った」というのを見てまずビビり、本文に入ると今度は「守護精霊」が出てくるのをみて、こりゃまた濃ゆいオカルト本を掴まされたかと思いました。
ところがこれはオカルトではなく、この本は私たちのいる世界とは似てるんだけどちょっと違う世界が舞台なのです。人間には必ずひとりに一匹、守護精霊がついているのが当たり前というのがこの本の世界なのです。そのほかの点では私たちの世界とかなり似通ったところがあるんですけどね。その世界と、私たちの世界と、もうひとつ別の世界が絡まりあい、主人公をときには翻弄しながら進んでゆく。まるで映画を見ているような、そんな本です。 |