“じいちゃん”手製のカレーライスを食べているとき、その死を目撃してしまった従兄たち。5人は誓い合った「将来みんなでカレー屋をやろう」と。
ニンニクを炒める匂い、ダシ汁と天麩羅の混ざった蕎麦屋の匂い、うなぎの蒲焼、コーヒーの焙煎、匂いに惹かれる食べ物は多い。が、書かれた文章を読んだだけで食べたくなるといえばカレーライスだ。味だけではなく、食べている様子まで生き生きと想像することができる。
本場アメリカ(?)にバーモントカレーを求めて、インドにカレー粉(?)の秘密を探りに、じいちゃん独特のカレーライスの味の秘密と“黄金伝説”を求めて沖縄へ、彼らは旅立つ。一読すれば、カレーの歴史やスパイスの調合まで分かってしまう、これは情報小説的青春放浪大盛りカレー小説だ。まさか今さら古くさいビルドゥングスロマンや青年の成長物語なんて、とも思うが、「カレー屋になる」というテーマだから許してしまおう。2段組460ページを一気に読まさせられた。
『粗忽拳銃』で小説すばる新人賞を受賞した竹内真、日本のジョン・アーヴィングを目指せ、と言ったら誉めすぎか…。竹内真
公式ホームページもこの際どうぞ。
ちなみに、読了までに私はカレーを5回食べてしまった(含むカレーパン)のに、これを書いているだけで、またカレーが食べたくなって…。 |