[No.10] 藤田浩芳のおすすめ 『梶原一騎伝』 斎藤貴男著(新潮文庫)
編集者への暴力事件による逮捕など、晩年の転落ぶりが印象に残る梶原一騎だが、この本を読むと、生涯を通じて文学への志を失わなかった純粋さが痛々しいほど伝わってくる。私同様、著者も、少年時代に『あしたのジョー』『巨人の星』『愛と誠』に夢中になった人だから、梶原一騎を、単なる金と力の亡者にはしておきたくなかったのだろうと思う。そんな著者の梶原への愛情が嬉しい。