ちょっとでも仕事の助けになれば、と思って読み始めたのだが、夢中になって読みふけってしまった。
我々が、衝動買いという極めて人間的な行為?をせず、必要なものだけを買っていたら、経済は今とは変わったものになっていたはずだ。かっては買い物客と店員のスペースが厳密に区切られていた。商品はガラス張りの木製キャビネットの奥深くに収められており、自由に触ることができなかったので、店員に商品の案内役をつとめてもらわなくてはならなかった。しかし開架式のオープンな陳列が主流になり、店員の助けを必要とせず、自由に商品自由に手にとって買い物ができるようになった今、ショッピングは、視覚、触覚、嗅覚、味覚、聴覚を刺激して、何を買うのか何を買わないのかを自分自身で選択させられる行為となっている。
では、商品の案内役がテクニックを駆使して勧めてくれた結果の衝動買いを、オープンディスプレーでどうやって五感にうったえ、購入動機を高めることができるのだろうか…。
「売れる店づくり」とはを、ありきたりのマーケティング理論からではなく、社会学、心理学、空間設計学等々を基礎に、徹底したフィールドワークから論じているところが、読んでいていちいちうなずける。なまなましい各事例に、思わず行きつけの店を思い出し、にやにやさせられてしまった。
カウンターの向こう側にいる人はもちろん、こちら側の人も、ショッピングに少しでも興味があれば、ぜひ一読をお勧めしたい。 |