2001年3月25日の朝日新聞に“新しい歴史教科書をつくる会”の教科書作成に抗議というニュースが載っていた。歴史をどのように記載し、次の世代に伝えていくべきかがこの問題の焦点である。最近よく論議される問題だが、どこに問題があるのか自分ではよくわからなかったのでお勉強。やっぱりお勉強には本が一番。選んだのが「国民の歴史」である。
この本は1999年10月に出版されていて興味はあったのだが、今まで読むチャンスがなかった。というのは、なんと774ページもある。これって読むのに勇気いりますよね。今までこの手の厚い本は夏休みとか時間がたっぷりとれる時に読むようにしていた。しかしこれはよくない。“今は時間がない!”というメッセージを自分の心に伝えてしまうからだ。そこで時間は十分あるんだ、ということを言い聞かせるためにもすぐに読みたいと思った。今読み終わってめちゃ満足。自分の人生がふたたび自由でひまで、時間に満ちあふれるようになった。
内容はとてもおもしろかった。基本的なスタンスは自由な歴史解釈である。歴史は事実としてはひとつ。しかしその解釈はいろいろな方法があり、解釈の自由は国民の権利である、というのが西尾さんの主張だ。人は過去を好きな解釈で考えるように、歴史も国民が自分の好きな解釈をすべきであるという主張は力強い。僕個人も事実をごまかすのはよくないと思う。国の歴史においても、個人の歴史においても事実は事実である。しかしその解釈は自由であるべきだという考えは正しいと思う。
たとえば、中学の歴史でならった鎖国。西尾さんによれば、鎖国=自己集中の知恵と呼ぶ。鎖国という事象は存在したのだろう。でもその解釈はマイナス面ばかりでなくさまざまなものがあるのだという。いってみれば、これはごきげんな歴史解釈だといえる。
自分たちの個人の歴史においても、たとえば英語の受験で落ち続けたり、手術がうまくいなかくて患者さんの視力が思うように出なかったりと、胃が痛むようなことがたくさんある。受験に落ちたという事実はきっちりと認めるべきだろう。でも解釈は明るくてもいい。落ち続けたために今の自分が存在しているのだと考える。今の自分、今の日本には、誇りをもってイメージしたい。その日本の歴史のイメージ作りにはとてもいい本だった。
一文明圏としての日本から縄文文化、平安文化、教育立国、日本の戦争、冷戦などなど、あらためて勉強することができた。もちろんこの考えは西尾さんの歴史解釈であり、新しい歴史教科書を作る会が編集したという視点は忘れずに読んだ方がいいだろう。
厚い本へのチャレンジはいい。自分には時間が十分にあるんだという感覚を取り戻したい人にもとてもおすすめの本である。
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