アメリカの全障害児教育法
アメリカには1975年に制定された全障害児教育法(Education for All Handicapped Chil-dren Act of 1975)があります。今回はアメリカの学校におけるADHDを持つ子供たちへの対応についてご紹介しましょう。
ニューヨーク州レイクロンコンコマ、サッチェム北高校のライアン・ケニー君(当時18)は2年生の時、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断されました。多動は治まりつつあるものの、読み書きなどに重度の学習障害を併発しています。
そんなライアン君には味方がいます。ノートテーカー(ノートをとる補助員)です。教室で付き添い、ライアン君が書けなかった単語を言語セラピーの先生に報告。特別授業にそれが活かされます。またノートをタイプするために学校のパソコンを自由に使うこともできます。すべて無料のサービスです。米国では、障害のある子に特別なサービスを保障する「全障害児教育法」があり、「査定」で障害が認定されれば、個々の能力に見合う「個別教育プログラム(IEP)」が作られます。
テストにも細かい注文がつきます。「休憩つき時間2倍で」「文言を簡単な表現にかえる」「計算機を使ってもいい」など、その注意書きは27項目にも及びます。高学年では教科ごとに先生が替わるため、IEPで情報も共有されます。
このプログラムのおかげで、ライアン君の読解力は3年間で2年生レベルから9年生にまで達しました。
この学校の子どもをよく診察するアルバート・アインシュタイン医科大学の斉藤卓弥・助教授(精神科)は、薬だけでなく、「言語療法週3回、補助員をつける」などといった「教育の処方せん」を書いています。それから臨床心理士とケアの方法を相談し、具体的に内容を決めていくのです。石崎敏恵先生は、日本から赴任したばかりのころは「特別扱いだ」と抵抗を感じたそうですが、心理士の「近眼の子にメガネを与えるのと同じ」という一言にハッとしたと語っています。
日本における、こういった体制づくりが待たれるところです。
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