芸術と学習障害
このサイト(http://www.ldonline.org)は、学習障害を持つ人々が、自分の隠れた才能を認識し、その才能を自分自身で育んでいこうとする物語を紹介しています。
2001年11月 芸術家パトリシア・バクレイ
小・中学生のころ、私は希望がない学生でした。“バクレイはどんな科目にもこれといって取柄がない”と言われてました。学生生活のあらゆることに神経を使い、エネルギーを費やしてきました。しかし絵を描いている時だけ、心が穏やかになり、集中することができたのです。そのきっかけは、中学生の時、先生が私を救ってくれたことにあります。“芸術が思う存分できる学校にパトリシアを入学させたほうがいい。そのほうが彼女の才能が出せる”とその先生は私の母にアドバイスをしたのです。
学習障害(私は“学び方の違い”と解釈しています)を持つほとんどの人が、絵画、音楽、演劇、音楽、ダンスなどの芸術分野において、才能を持っていると言われています。“神はすべての人間を平等に作った”これは、すべての人間の能力を均等に創ったということではなく、例えば、ある人は数学的な才能を持っているが、数学以外のクリエイティビティには欠ける、ということを意味しています。
神は、私に対して、読み書きやスペルを綴る能力は授けませんでしたが、人々にメッセージを伝えるための絵を描く能力は授けたのです。私はこの芸術的な才能を授けられたことを幸せに思っています。
芸術は私にとって、コミュニケーションの手段です。だからこそ、それに対してかなりのエネルギーを費やし、成功と達成感を得ることができるのです。
“私の子供は絵を描く才能を持っているのですが、どうやって手助けしていいのかわからない”という質問をよく受けます。私は“子供達のその能力を尊敬し、絵を描くことを奨励するようなサポートや環境を整えるといいですよ。光の入る、窓の近くに机を置くことから始めるといいでしょう。それが幼い芸術家にとっての初めての『スタジオ』となるでしょう。”と。いまの子供達がテレビに熱中しやすいなかで、絵を描くことに集中させることは、子供のクリエイティビティを養うことになるのです。
私の母は、絵の学校に行くことを心から尊重してくれました。そして、絵を描くことで自分自身への信頼が高まっていったのです。ただ、私が絵を習得する方法には問題がありました。先生は“正しい絵の描き方”を教えてくれましたが、私は、自分の描き方が持つクリエイティビティを曲げることはできませんでした。この頑固さが、結果的に私のユニークさと成熟を生んだのです。つまり、人によって、学ぶ方法は異なるということです。個のクリエイティビティを引き出すためにも、「学び方の違い」は尊重されるべきなのです。
ヴィンセント・バンゴッホは、学習障害を持っていました。彼の描く絵画は、とても過激だったので、人々に受け入れられることはありませんでした。今や賞賛の的となっている彼は、自分の思う絵の描き方を貫いてましたが、お金を稼ぐという意味では無垢だったのです。しかし、世界は、そういった意思があるからこそ、豊かなのです。もし、世界のみんなが同じ声で歌ったら、何の楽しみがあるのでしょう。
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