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　　　　　　　　　　　　Vol.274 　 Sep. 1, 2006
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　　●　伊藤守の『長生きしようよ』　　ポジティブ・シンキング


　　　　ベンジャミン・ザンダーと話していたら
　
　　　　「伊藤、ポジティブ・シンキングなんてだめなんだ」

　　　　そう言うんです。

　　　　「どうして？」

　　　　「ポジティブなんていうのは、
　　　　要するに、背景にネガティブがあるんだ」

　　　　「ポジティブなんて言うやつは、
　　　　要するに、ネガティブに取り込まれているわけだ」と伊藤。

　　　　「そうそう」とベンジャミン。
　

　　　　「相手に『どうぞリラックスしてください』なんて言うのは
　　　　『お前はいま、緊張しているんだ』と言うようなものだからね」と伊藤。

　　　　「そうそう」とベンジャミン。
　

　　　　問題がある。
　　　　ベンは自分が喋っているときには、絶対に私に聞かせるのだが、
　　　　私が話しているときには、よそ見をしたりして、明らかに意識が散漫だ。

　　　　それで、また自説を説く。
　　
　　　　「－－－すべき、とか、－－－しなければならない、
　　　　ああいう類の話は信じちゃだめだ。方法論も役には立たない」

　　　　「そうそう。
　　　　『それでどうしたらいいの？』なんて質問をする人がいるけど、
　　　　聞いてどうするんだろうね」と私。
　　
　　　　そのときもベンは聞いていない。

　　　　私の息子のプディング風のケーキに目を奪われ、
　　　　自分のフォークを差し出して、断りなしに、一口食べた。

　　　　そしてまた、自分のことを話す。
　　
　　
　　　　ベンは、私の知っている限り、もっともポジティブな人の一人だ。
　　　　要するに、ポジティブな人と言うのは、何かが明らかに欠落している。

　　　　本来、人は、ネガティビティを背負いながら生きているのである。
　　　　だからこそ、ポジティブに憧れる。
　　　　普通の人は、どこかネガティブなのだ。

　　　　したがって、根っからポジティブな人とは、
　　　　何かが欠落しているのである。

　　　　本当は、まわりは迷惑しているのだが、
　　　　ポジティブがいいとされている世界では、
　　　　そういう人はなぜか許されている。
　　

　　　　それにしても、なんですね。

　　　　ネガティブな人が、「ポジティブ」なんていうのは、
　　　　やっぱり変ですね。
　　　　まるで、暗闇をブラックライトで照らすみたいで。
　　
　　　　無理して明るくなんて振舞わなくたっていいんです。

　　　　だからといって、暗さにあぐらをかいて居直るのは、どうかと思う。
　　　　それで、どれがいいって聞かれても困るけど。

　　　　だからね、私は思いました、

　　　　明るい暗いは電球に任せて、今日は機嫌よく生きようって、、、。



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