Editor's Room

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2018年7月6日(金) 「ワールドカップ」

有象無象の自己啓発書だかに「イメージトレーニングは大事」と書いてありそうなので、早速実践することとする。強豪ベルギーに対し、原口選手と乾選手の連続ゴールでよもやの2点リード。後半20分、勝利を確信した西野監督は一人のベテラン選手の投入を決意した。本田選手ではなく、忖度によって23人目の代表選手として選出されつつも未だ試合出場を果たしていないHK選手、その人である。満を持してピッチへ躍り出れば、セネガルのシセ監督に憧れてしたというドレッドロックの長髪をなびかせて、あのアザール選手、ルカク選手、フェライニ選手といったスーパースターを脇役に追いやるほどベルギーの12人目の選手として獅子奮迅の活躍を見せるのだ。オウンゴールを含む全失点に絡み、日本は2-8で惨敗した。日本中涙も何もなくただただ呆然。そして打ち寄せる憤怒の大波。記者会見で「これで代表を引退する。自分で引退する時を決めることのできる稀有な選手はそうそういるものではない」と言い放ち、遁走。ドレッドロックは目立つので、慌てて現地の床屋で五分刈りにし、ほとぼりが冷めぬうちに帰国するわけにはいかぬからと、今立っているのは日本代表合宿地であるタタールスタン共和国のカザンにあるカザン・パッサジルスキー駅である。ここからニジニ・ノヴゴロドかペルミに出てシベリア鉄道に乗り換えて、東を目指すのも良いが、シベリア鉄道はおそろしく退屈だという。ボルゴ川沿いをそのままカスピ海の河口の町アストラハンまで下り、カザフスタン、ウズベキスタンと中央アジアを抜けるルートの方が趣深い。12:21カザン発の列車に乗り、翌日の21:30にアストラハンに着く。1泊し、17:02の列車で国境を越える。翌朝7:08にカザフスタンのアティラウに着く。パスポート写真がドレッドロックの男は目の前では五分刈りとなっており、パスポートチェックで一悶着あるだろうが、賄賂で切り抜けたい。アティラウからはウズベキスタンの首都タシュケントを目指す。途中駅のヌクスにてアラル海の干し上がった光景を見て環境破壊に問題意識を抱くもよし、ヒヴァやサマルカンドにてシルクロードの歴史のロマンに浸るもよし。ただ、この辺りの列車は冷房がなく、夏の車内は40度にもなっており乗客は皆ぐったりしているといくつかの紀行文で読んだ。私のような繊細なシティーボーイには絶対無理と、涼しい宇都宮線の中で我に帰るのである。そして、ワールドカップをテーマにした本文はシルクロードの阿房列車の算段となり、イメージトレーニングはただの妄想であることに気づく。自己研鑽に励むか、睡眠不足を補う貴重な長い通勤時間を無為に浪費してしまった。(HK)

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