Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2018年5月18日(金) 「パーティ」

パーティというと、立食と着席とがある。立食パーティでありがたいのは、うろうろできること。席が決まっていると、どうしてもいろいろなひとと話せないし、ご飯をとりに戻ったりもしないといけない。会社の人たちと、かに道楽に行ったことがある。かにコースはもちろん着席だった。かには無言で食べるという話があるが、初めて行ったかに道楽は、刺し身あり、焼き物あり、汁ありと、とても楽しいコースだった。また行きたいといつも思っていて、友達や親戚を誘ったりするのだが、未だにいけてない。着席パーティと、かにコースの無言さの相性は、楽しい立食パーティに匹敵すると思うのですが、やっぱりみんな楽しくおしゃべりしたいのかな。(T)

ノーベル賞を受賞したとしても、辞退してやる。受賞スピーチはもちろんのこと、何より恐ろしいのは受賞パーティだ。スウェーデン国王と何を話せばよいのか。「アイ ワーク ウィズ スウェーデン マン、えっと、ヒー イズ ベリー ナイスガイ......オウ 新三郷ズ イケア イズ ベリー ナイスね」と、目の前の皿に盛られたミートボールに掛けられたベリーソースになぞらえてベリーベリーと連発すれども、話の接ぎ穂がないにもほどがある。耐えられない沈黙。国辱である。幸いなことに生まれ持った凡人としての才覚と日夜の絶え間ない不努力の結果、ノーベル賞とは極北におり、荒唐無稽な全くの杞憂だ。酒は好きだ。だが、いい年こいてひどい人見知りだ。若い頃は良かった。飲んで飲んでひたすら飲んで、頭のネジを吹っ飛ばせば、人見知りも吹っ飛ぶ。どんな肌の合わない人とも、それこそ飲み屋でたまたま隣に座った人ともギャーギャー騒げたものである。だが、もう大人なので頭のネジを吹っ飛ばす飲み方をしないと心に決めてからは、困ったことになったのである。話せない。話しは脱線するが、世にはキャバクラ好きという全く相容れない男がいるそうである。一度だけ付き合いでキャバクラに踏み入れたが、なんで見ず知らずの女に気を使いながら何とか話しをしなければならないあげくに、膨大な酒を飲まれ、甚大な金を払わねばならぬのだ。金輪際行かないと心に決めたが、見ず知らずの人と饒舌に会話できる、つまりキャバクラを楽しめるスキルというのは、パーティにてうまく立ち回るためには、必要なのではないかと思う。先日社内で立食パーティがあった。パーティが嫌なら行かなければいい。だが屍肉にたかるハイエナ。タダ酒にたかる私。よだれを垂らしながら向かった先のパーティ会場にて無事酒を受け取り、乾杯をする。ここまではいい。だが、これからどうしたものか。みながみな、既にクルクルと上手く立ち回り、あちこちで会話の渦が巻き起こしている。さしずめ、それはイスラム神秘主義のメフレヴィー教団の旋舞か遊園地のコーヒーカップか。コーヒーカップに乗ろうとして、椅子取りゲームに敗れ、回転するカップにピョーンと弾き飛ばされると、何とか落ち着けるのは壁際である。山際はやうやう白くなるものだが、壁際は灰色である。夢破れて山河あり。憐憫の情を持って、話しかけに来てくれる人もいる。だが、一言二言話した後の話の接ぎ穂が見当たらず、会話は早くも息絶え絶え。相手は「飲み物取ってきます」と根をあげ、私の前をそそくさと立ち去っていく。そして、その人はもう二度と帰ってこない。話し相手はいないので、酒を飲むしかない。酒を飲むしかないので、ひたすら酒を飲むしかない。酔いが回ると満足して、すっとパーティの喧騒から姿を消す。途中で姿を消しても誰にも気づかれない。立食パーティの良いところである。(HK)

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