Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2018年1月5日(金) 「犬」

黄河文明の中心、中原の地を取り囲む異民族を蔑んで、こう呼んだ。東夷北狄西戎南蛮、つまり夷狄である。「夷」とは未開・野蛮。現代では「犬」と呼ばれる四肢の動物がいるが、野蛮で獰猛で凶暴な獣ということで、古事記の時代の人々は「夷奴(いぬ)」と呼び、蔑み恐れていたという。だが、狡猾極まる夷奴は犬公方の元で権勢を誇り、現代では野蛮で獰猛で凶暴な獣という正体を誰もが忘れ、「犬」という漢字をあてがわれるばかりでなく、ワンちゃん、ワンコなどと愛されるようになってしまった。憂国の士として実に嘆かわしい。嘆かわしいのは、夷奴の逸話が全くのとっさに作った虚構であるということではなく、犬嫌いということで、優しさのかけらもないクズ人間として周りから扱われることである。だが、子供の頃の泣きわめく私のことを吠えたて、追いかけ回したミニチュアダックスフンドの集団を赦し、どう優しくしろというのか。犬が前から歩いてくると、3メートルは離れて壁際に避けざるをえないのに、どう優しくしろというのか。私は夷奴が野蛮で獰猛で凶暴な獣であるということを決して忘れない。(HK)

渋谷駅で集合、となると9割9分ハチ公前で集まることになる。中学の頃初めてハチ公像を見たときは、マーライオンを見たとき並みにがっかり感があったが、今となってはモヤイ像の存在感の薄さに驚くほど、あのハチ公像は我々の生活に溶け込んでいる。ハチ公の存在のお陰で、秋田犬はしっかりしてる、飼いやすいなんていうイメージを持っているのは自分だけだろうか。海外をふらっと旅していると、良く出くわす野良犬。犬に詳しいわけではないが、世界中どこの野良犬も同じ犬種に見えてしまう。狂犬病の注射をいつも打ち忘れるのでそそくさと退散するのだが、カバンに忍ばせてある食料めがけて追いかけてくる様は恐怖でしかない。なんと凶暴なこと。そんな話を以前旅行した中南米のゲストハウスでしていたら、「日本の秋田ドックは利口なんだろ」というガイジン。へえ、ハチ公の話って海外でも有名なんだ、と思わぬ犬外交に感心してしまった。今となってはハチ公を見たところで何の感情も湧き起らない。が、あと数時間後には、極寒の中で記念写真を撮る外国人旅行客を横目に、遅れてくるであろう友人を待ちながらハチ公と対峙してるだろう。グッジョブ・ハチ公。皆様、良い三連休を。(N)

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