Editor's Room

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2017年1月6日(金) 「昨年の漢字一字」

禿頭になってしまえば後の祭り。一度たりともジョニー・デップのような長髪にする機会もなく人生を終えてしまうことになると焦燥感に襲われ、不惑もすぐ手に届かんとする年齢にもかかわらず、混迷したのが最後の反抗とばかりに一昨年から昨年にかけて古代のゲルマン人のごとき長髪になってしまった。そうするとどうも運が悪い。数万円入った財布を落とす。カラスのフンは頭上に落ちてくる。草サッカーのPKは外す。もはやここまで。「切れ、切れ、切れ、切れ」と債鬼のごとく追いかけてくる妻の言葉に観念し、白旗を挙げて断髪してみれば、パックスロマーナの到来であった。財布を落とすこともなく、カラスのフンも落ちることなく、PKを蹴る機会はない。甘受さえすれば完全な自由は失えど、厳格な制限下での多少の自由は手に入るパックスロマーナ。満腹せずとも満足する。昨年の漢字一字は「満」としたい。(HK)

「アメリカと、残りの資本主義世界全体は大きく矛盾している」。演説台から身を乗り出し、集まった群衆に向かって身振り手振りで既成政治の批判をすれば拍手喝采の嵐。工業や経済の低迷によって生活に行き詰まり、貧窮にあえぐ市民を代弁し、怒りを為政者にぶつける。期待させていたら申し訳ないが、これは次期米国大統領の話ではない。今からちょうど100年前、ペトログラードで国家権力を掌握したレーニンの演説である。この年を境に世界は資本主義と社会主義の二極化に向かった。あえて1917年の漢字一字を選ぶならば、その後の世界情勢に変化をもたらしたという意味で「変」だろうか。そして一世紀を経た今、世界はまた、大きなうねりの中に入り込んでいるのではないかという見方がある。罵詈雑言にまみれた政治対立、甚大な被害をもたらす天災、終わらないテロ攻撃。米紙「スレート」は2016年を象徴する言葉に「家に帰りなよ2016年。君は酔っぱらっている」(Go Home, 2016, You’re Drunk.)を選出した。政変、急変そして大変。やはり昨年の一文字も「変」にしたいが、何万という漢字の中から同じ字を選ぶのは何か気が引ける。100年ぶりに同じ漢字を選ぶのにも躊躇しているのに、片や12年間で3回も同じ文字を選出するとは。2020年もまた同じ漢字を選ぶつもりなのだろうか。これが単なる年次行事にならず、もう少し漢字そのものについて振り返り、考える機会に変えられないものか。それにしても、8年前の大統領選挙のスローガンが"Change!"(変化を!)だったのは何かの偶然なのか、今となってはただの皮肉なのか。変化を経た「福」のある2017年になることを願うばかり。皆様、良い週末を。(N)

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