Editor's Room

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2016年11月11日(金) 「トランプ」

なぜ我々はトランプに対し、あれほどまで一喜一憂するのであろうか。富める者は富み、貧しい者は貧しく、格差は広がるばかりであった。傍若無人な富豪への怒りと絶望。革命のタイミングやいつか。すがるのは切り札として大切に溜めこんでいた同じ数字のハート、クラブ、ダイヤ、スペードの4枚のカードだけだ。革命が成立した時の熱狂と興奮。これからは俺様が大富豪で、これまで富める世界を謳歌し、権勢を振るっていた貴様らは今や大貧民。這いつくばって泥水でもすすりやがれと足蹴にしていると、さらなる革命で、三日天下、あっというまに奈落の底に転がり落ちる。我々が熱狂した「大富豪」。修学旅行の夜の話である。それにしても、と私は思う。トランプを鞄に忍ばせてくる者はどういう思いで用意するのだろうか。「これを持っていけば、みんなと楽しく遊べるなあ」などと思って用意しているのだろうか。なんというあざとさ。そもそも自分が持ってきたトランプでみんなが一緒に遊んでくれるに違いないという自信が鼻につく。私なんぞがワクワクした気持ちでトランプを用意し「おーい、トランプ持ってきたよ。みんな集まれー!」と呼びかけた途端、他の者が持ってきた「UNO」という近代的カードゲームの前に脆くも敗れ去り、誇りを捨てて惨めにもUNOにまぜてもらう姿が容易に想像できる。なので、誰かがトランプを持ってくることを期待する側の人間であり続けた。(HK)

今週、あえてこのお題(笑)。トランプで、世界中が、今週ほど、ざわついたこともなかなかなかっただろう。あのトランプも、今後、目が離せない。子供が少し成長してからは、一緒にトランプをすることが増えた。本当は、大富豪、ナポレオンなどをやりたいが、ルールを説明するのが面倒なので、ひたすら、ババ抜きや7並べ、スピードである。我が家は大人も大人げなく、本気で取り組むので、子供が負けることがほとんどである(笑)。でもそのおかげで、息子は学校でスピードをやっても、誰にも負けないらしい。大人が大人げなく振る舞って、いい面もあるらしい。そう遠くない将来、親のボケ防止に、息子が渋々、ババ抜きに付き合ってくれるようになるかもしれない(お手柔らかにと、願う自分勝手な親)。時の流れである。時の流れと言えば、エディターMは、今日で、ここを卒業する。時の流れを感じる。もう10年以上、「エディターズルーム」を書く時間は、過去の自分を振り返ったり、自分の考えをまとめたりする楽しい時間だった。来週から、どうやって自分を振り返ろうかと、途方に暮れている。そして、これまでありがとうございました。HKの健闘を遠くから見守るつもりです。(M)

こんなにも先の見えない盛り上がるゲームもない。下剋上も、どんでん返しも、手持ちの切り札次第で不可能を可能にすることができる。最後まで結末の見えない興奮と落胆を含んだ、なんと愉快な遊びなんだ。ババ抜きでも七並べでもいいが、やはり「トランプ」といえば「大富豪」に限る。ジョーカーという切り札を手持ち札に持っている時にこらえる笑いほど愉快なことはない。目論むところ、ゲームの終盤で相手が弱みを見せたところで止めの一撃を加えるのだ。なんと愉快だ。そもそも「トランプ」という言葉自体、英語圏では「切り札」の意味で使われる。日本ではカードデッキそのものを指すが、これは日本人お得意の勘違い和製英語である。大富豪から大貧民まで共存する超格差社会の中で、ジョーカーという切り札、いや、もとい、「トランプ」によってアメリカンドリームを夢見る。ラスベガスで上手くいけばいいが、現実はミッドウェスト止まりだ。「大富豪」はやめて「ポーカー」を極めようか。皆様、よい週末を。(N)

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