Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2016年6月3日(金) 「常連」

先日、どうしても地元のプロサッカーチームの海外でのアウェイ戦を見たくて、地元の街を彷徨った。最初目をつけていたサポーターの集まる有名な居酒屋は店の外まで長蛇の列。スポーツバーも満席。20分くらい彷徨っていると、寂れて朽ち果てそうな商店街の一角で試合中継が放映されている10人も入れないような小さなバーを見つけた。胸騒ぎがしたので一度通り過ぎたものの、引き分け以上で8年ぶりの決勝トーナメント進出という重要な試合だけに、あきらめることができない。マスターに「入れますか?」と聞くと、入れるというので、勇気を振り絞って入ってみると、試合に全く集中できない。コミュニケーション能力の欠如した人間にとって常連と常連と癒着したマスターという人種ほど脅威なものはないのである。常連が唾棄したくような冗談を吐いてバー中を下衆な笑いで被おうものなら、私も愛想笑いしなくてはならないのかと気が気ではない。テレビに集中しているフリのできる試合中はまだいい。ハーフタイムは恐怖の時間であった。カウンター席で私の隣に座る若い女が、私の頼んだつまみを見て、「おいしそうですね」などと絡んできて、マスターは「気をつけて、彼女は本当に取りますよ」と絡みの上書きをし、どう返答していいか困惑する。試合は見たい。だけど逃げ出した。応援しているチームのゴールより、タイムアップの笛を待ち焦がれる、全く楽しくないサッカー観戦なのである。店も常連も別に悪いことをしているわけではない。ただ、場違いだった。待ち焦がれていたタイムアップと同時に逃げるように立ち去った。「行きつけのバー」という響きに憧れはあるものの、コミュニケーションが煩わしい。もし、一見様のみ歓迎の私語禁止バーがあれば、そこで常連になるつもりだ。(HK)

「常連」と言えば、しょっちゅうそのお店に行き、店員さんとも仲良くて、お互い、名前で呼び合ったりするというイメージだ。たまに「これ、店長から」なんて、サービスしてもらったりして。バーとかなら、マスターに恋愛相談もできそうだ(勝手な妄想)。ここ数年、よく行く店と言えば、スーパー(常連だが、特に誰とも関係は築けていない)、100円均一ショップ(行くたびに店員さんが違う)、パン屋さん(忙しそうで、とても関係が築けそうにない)、コーヒーショップ(ここも行くたびに店員さんが違う)といった感じで、頻繁に行っていても「常連」にはなれていない。唯一、常連になれそうなのが、中高年女性が愛用するパンツ(ズボンのほう)屋さんである。何回か最近通っていて、向こうも名前と顔を覚えてくれたようだ。が、いかんせん、そんなに本数はいらない。買ったものの、まだ穿いていないパンツもある。行き続けなければ「常連」にはなれないが、要らないものは要らない。「常連」への道は、長く険しく、お金がかかる道なのである。(M) )

itoh.comトップ > エディターズ・ルーム > 2016年バックナンバー

go Pagetop