Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2013年7月12日(金) 「メロン」

梶井基次郎を気取りつつも、京都河原町の丸善に檸檬を置くのも芸がないし、そもそも閉店してしまったので、ビーンボール気味となるが、大宮のジュンク堂書店にメロンをそのままにしておいて、何食わぬ顔をして外へ出たとする。布石をまるで打ってこなかった半生の結果としての将来への漠然とした不安、乏しいビジネススキル、蓄積している内臓脂肪、高い尿酸値、陰険な性格、小さい器、少ない小遣いなど、いけないことは沢山あるのだが、得体の知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけているわけでもないので、メロンを放置する伏線は、「檸檬」と「メロン」の似た語感のみである。メロンを爆弾に見立てることもできなくはないが、不吉な塊の対比としての檸檬の鮮やかな色彩に比べ、メロンは、変にくすぐった気持ちになり「出て行こうかなあ。そうだ出て行こう」と浮かれるには、色合いの鮮やかさに欠ける。そもそも檸檬ならまだしも、折角のメロン、書店に放置なぞもったいない。メロンは色彩ではなく、味覚で人を幸福にする。メロンを手にしたら、ジュンク堂書店に寄ることもなく、すたこらさっさと中山道を下っていき、家に直行するだろう。そして冷蔵庫でキンキンに冷やして、かぶりつくのだ。うまい。ただ、万に一つ、本稿を読んでいる人がいるとするのなら、事前に私に連絡の上、大宮のジュンク堂書店にメロンを放置してほしい。店に迷惑なので、1分もしない内に私が回収し、小脇に抱えてすたこらさっさと中山道を下っていきたい。放置した人は梶井基次郎の檸檬の世界を疑似体験をビーンボール気味に味わい、私はメロンの旨味そのものを味わう。(HK)

メロンをそれほど食べる機会はないが、最近、メロンパンに凝っている。正直、以前はメロンパンって、中に何も入っていないし、「ちょっとつまらないパン」という位置づけだったのだが、こういうシンプルなパンこそ、味に差が出ることがわかってきた。今住んでいるところの近くに、ものすごく素材にこだわったパン屋さんがある。国産小麦、天然酵母、バター、砂糖、卵もこだわりのものばかりを使っている。ここのメロンパンは本当においしい。日によって、若干、焼きすぎだったりするのだが、その手作り感もなかなか嬉しい。ここのメロンパンのおかげで、メロンパンが大好きになった。以前はパン屋さんに行っても、メロンパンを選ぶことは少なかったが、今はすすんでメロンパンを買って、食べ比べしたりしている(今のところ、近所のパン屋さん以上のものはない)。でも、一度でいいから「メロンパン」じゃなく、「メロン」を食べ比べしたいなあ。(M)

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