Editor's Room

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2013年5月24日(金) 「作文」

小学校5年生の時、国語の時間に、自分で小説(ってほどでもないが)を書くことがあった。創造性、発想力が乏しいため、私の書いたものは自分でいうのもなんだが、本当につまらなかった。それに引きかえ、同じクラスの男の子の書いた作文は面白く、今でも記憶に残っているくらいである。その物語の主人公の名前は「パン・ミルクマーガリン」、若き青年である。そのほかの登場人物の名前も、すべて給食のメニューにちなんで付けられていた。発想が素晴らしい。物語は、この「パン・ミルクマーガリン」が、仲間と一緒に敵と戦いながら宝物を探すというものだった。敵にはその子が嫌いなメニューの名前が使われ、仲間には好きなメニューの名前が選ばれていた。そういう発想が私にはなかったんだよなあ。書いた本人は、もう絶対に覚えていないだろうけど、何十年もたって、まだ誰かに覚えてもらえる作品って、ある意味、名作なんじゃないだろうか。(M)

中学の2年生だか、3年生の時、毎日のホームルーム時でクラス全員の前で指名された生徒が自作の作文を発表することが恒例となっていた。どの学校にも必ず一人はいるフランシスコ・ザビエルと敬愛されていた教師の迷惑すぎる企みだ。何たる羞恥。自分の書いた稚拙な文章を他人に読まれるのはまだいいとして、自分で口述するなぞ、耐え難さの極みである。「東京生まれ、HipHop育ち、悪そうな奴はだいたい友達」のような連中に反省文でも読ませればいいものの、清廉かつ品行方正、純朴な私みたいな中学生に自分の作文を口述させるなど、トラウマとなって、将来に大きな禍根を残すようなものだ。だが、正しい中学生としては教師の命令に従わなければならない。青臭く「人生は旅だ」みたいなことを云々かんぬん書き散らし、早口でまくし立てて、退散したものの、意外にも感嘆の声がわずかにあった。豚が木に登るように、有頂天となり、そのまま作文好きになってしまったのだが、中田英寿氏の引退メッセージ「人生とは旅であり、旅とは人生である」で、あの時書いた作文の青臭さを思い出し、遁世したくなった。(HK)

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