Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2013年3月22日(金) 「お花見」

お酒も飲めないので、特に花見には思い入れはないが、あのにぎやかな雰囲気は嫌いではない。だが個人的には、大勢の中で見る桜よりも、1本だけ見事に咲き誇っているような桜を見るのが好きだ。引っ越したりして桜の季節になると、「ああ、ここの木は桜だったんだ」と気づかされる。それまで全然気づいていなかったのが申し訳なかったりするんだけど。だいたい庭に桜の木があるのは、たいてい豪邸のお庭なのだが、そこから道のほうに突き出ている桜の枝の下で、夜、ひとりでお花見をしたりしていた。よく逮捕されなかったなあとは思うけど(笑)。(M)

大学時代、私は莫迦だった。類は友を呼ぶ。周りも莫迦なので、莫迦なことを莫迦みたいにし、社会を莫迦にし、しかしそうしたことが莫迦みたいに面白かった。花見も莫迦 がすると、ただただ酒を飲み、莫迦話しに明け暮れる。とにかく莫迦なので、あまつさえ誰かが持ち込んだ莫迦みたいに辛すぎるハバネロのタバスコを舐めては、苦悶、悶絶し、「あぁ莫迦みたいな死に方をするのだな」と一筋の涙をこぼす。そこに桜の存在は微塵もなく、上野公園の植え込みの土の色しか感じることができなかった。そうした時代から十数年経ち、少しだけ分別がついたのか、飲んで苦しむだけの莫迦みたいな花見をすることはなくなり、やっと桜が目に入るようになった。莫迦みたいに楽しい、あの時代の気持ちが消えてしまって寂しい、と書きたいところだが、そういうわけではなく、やはり莫迦みたいに辛かったハバネロのタバスコのことを思い出しては身悶えるだけで、今のように落ち着いて桜を眺める方がましだ。(HK)

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