Editor's Room

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2011年4月22日(金) 「証明写真」

以前、アメリカに住んでいたとき、学生証のための写真を学校で撮った。目は半開きで、これ以上ないという間抜けな顔・・・。これでは誰だか分からない。「証明証の意味がないので、撮り直して欲しい」と係の人に言ったが、撮り直すなら5ドル払えと言われ、すごすごと引き下がった。しかし、このときケチらなければ良かったと、何度も後悔することになった。テストを受けに行っても、公的機関に行っても、私だと認めてもらえず、結局、パスポートを携行しなければならなくなった。学生証を友だちに見せると、文字通り、お腹を抱えて笑い、その学生証の写真を撮って帰る始末。「これ以上(以下)の証明写真は撮れないと、みんなから褒められた。本当は消したい過去だが、たくさん想い出ができてしまったので、いまだにその学生証が捨てられないでいる。(M)

運転免許の証明写真は人の歴史である。10年前の運転免許証を見て、愕然とした。スッとした輪郭、微笑をたたえた爽やかな口元、自己鍛錬に抜かりのないことが伺える程よい緊張感の漂う表情。女性からの羨望と、男性からの嫉妬を一身に集め、大学では違う学部で女性たちによるファンクラブが組織される一方、嫉妬の炎に燃えた硬派を装う応援団に夜道付回されたりしていた過去は全く蘇らない。ただ現在よりは顔面は丸くないことは確かであり、運転免許証のその後の変遷をたどってみるや、顔面膨張の歴史が雄弁に語られていた。今の免許証の写真は酷いものである。私が謙虚だからそう言うのだと思われるかもしれないが(私によって)、実際酷いものである。ただ次回の免許証を見る4年後、今の免許証の写真は古きよきものに変わるだろう、さらなる膨張によって。(HK)

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