Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2008年10月17日(金) 「お祭り」

地元の神社は毎年7月初めに浮かれる。夏祭りだ。小さな神社の祭りだが、東京都境から1キロながら娯楽に乏しい地方の田舎町(東京はド田舎だから仕方ない)の風情が漂う我が町にとっては一大イベントなのである。陰険な地元中学校が、わざわざ期末試験をこの祭りにぶつけるほどだ。祭り当日は早朝から町は浮かれる。神社は何を血迷ったのか早朝から花火を打ち上げては、轟音を町中に鳴り響かせ、市民の安眠を妨害するのだ、ただ祭りをやるというアナウンスのためだけに。それに対して憤る者は私を含めて誰もいない、私は気づかないほど熟睡しているからだが。日も高くなると、神社に向かう親子連れ、小学生、中学生、高校生、ヤンキー、ヤクザが目に入るようになる。私は祭りの雰囲気は好きではないが、ある目的のために毎年必ず足を踏み入れている。神社への道すがら、空き地では祭り関係者が酒盛りしていて、一部は酩酊している。場末のスナックは路上に店を出し、日光の下で干からびそうな「ママ」が、ヤニの染み付いた手で焼きそばを作り、酒に焼けた喉で気だるそうに声を出し売っていく。ヤンキーとヤクザに細心の注意を払い、神社の敷地内に入る。屋台のカキ氷屋を探し、もっとも大きそうな器を用意している店を選ぶ。味はシロップが腐っていない限りはどこも同じだ。最近はシロップかけ放題の店が多く、子どもがいろいろな種類のシロップをダラダラかけている。時間が大切な大人の私は彼らに無言のプレッシャーをかけるものの、虫けらのような私の圧力に注意を払うこともなく(象がアリにかまれたところで意に介さないのと同じだ)、結局は彼らの欲望が充足するまで大人らしく我慢して、我慢した分はシロップの量に発散させる。ブルーハワイのシロップが真っ白な氷を鮮やかな青色に染めていく。白いところがまったく見えないブルーハワイのかき氷を食べながら、ヤンキーとヤクザに細心の注意を払いながら、そのまま家に帰るのだ、舌を青く染めながら。私も地味に浮かれているのかもしれない。(HK)(M)

私が以前住んでいた場所では、町内会でお祭りが開かれていた。たいてい夏の終わりか秋のはじめだ。町内会でお祭りなんて別に珍しくはない。だがその町内には広場らしい広場がないため、私のマンションの前の通りを使って開催されるのだ。バスも通る道を通行止めしてしておこなう。メイン広場(?)が私のマンションの正面で、そこにやぐらが組まれる。自転車置き場にはヨーヨー釣りや金魚すくいが出る。町内には大霊界で有名だったTさんも住んでいて、毎年お祭りに来ていた。だがお祭りなんて、一人で行っても楽しくない。でも友達を呼ぶほどの規模でもない。そうは言っても、すぐそこでやっているんだから、少しは参加したい。というわけで、私は焼鳥や焼きそば、かき氷などを大量に買い込んで、家の中で一人お祭りを開催していた。こんな楽しみ方ができる人も多くはないはずだ・・・なんて思いながら。(そもそも家の前でお祭りがおこなわれる人も多くはないだろう)。夏の終わりになると、あのお祭りのことを思い出す。もう一度行ってみたいが、引っ越ししてしまった今は、もうあの楽しみ方はできない。家の中での焼き鳥や焼きそばがこんなに懐かしいなんて、少し意外だなあ。(M)

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