Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2006年5月12日(金) 「電車」

通勤で乗る電車は、私の乗る駅から2つめの駅で乗換える人が多い。ちょうど降りる人の前に立っていると、ラッキー。座ることができる。毎日同じ時間の電車に同じ車両に乗るので、顔ぶれはだいたいいつも同じ。座っている人の中に、必ずその駅で降りる女性がいる。その人は、なぜか毎日はその電車に乗っていないのだが、その人がいると、私はつい、さりげなくその女性の近くに立ってしまう。向こうも私の顔を覚えているだろうと思うので、席を狙っているのがみえみえかなあと、堂々と前に立つのは気が引ける。その女性が降りる駅から乗ってくる夫婦もいる。日経読者率が高い通勤電車の中で、奥さんがいつも朝日新聞を広げて読んでいる。そして、すごく顔の濃いご主人がそれを覗き込む。いつもその構図が一緒だ。その夫婦の新聞が朝日だということが妙に気になる私です。(C)

電車に乗ると必ず週刊誌の中刷りに視線が行く。私は両目とも裸眼で2.0は見えるので、結構遠くの中刷りにまで目をやってゴシップネタをくまなくチェックしている。字が小さくて読みにくいものでも、(チープな)プライドにかけて、必死で読もうとする。立ってまで見ようとは思わないが、気になって仕方がないのでこっちも必死である。どうしても読めないものは、ちょっと敗北感を感じながら、降りるときに近くを通って確認することにしている。(ゴシップネタなのに必死)。といっても中刷りを見て、雑誌を買うことはほとんどない。しかし私は日々、中刷りと対決している。(M)

中学生の頃から、なんの変哲のない通勤電車に旅情をかきたてられる悪癖から逃れることができない。毎朝が日本テレビの「ぶらり途中下車の旅」の世界との戦いなのだ。下車駅に近づくにつれて、滝口順平の「おやおや、今日は何処へ行くんですか?」のナレーションが悪魔の囁きとなり、穏やかかつ静かに迫ってくる。「おやおや、今日は何処へ行くんですか?」、、、「おやおや、今日は何処へ行くんですか?」。。。ああ、このまま乗り続けたい。薫風がそよぎ、新緑が萌える山へ。波間に揺れるまばゆい光に包まれた海へ。大学生のときは、いとも簡単に簡単に誘惑に負けて、三浦海岸で海を見たり、江ノ島水族館で魚を見たり、小田原城に行ったりしていた。しかし今の立場だと、負け犬根性の丸出しの私でも、朝青龍のような圧倒的な強さで頭の中をめぐる滝口順平のナレーションに打ち勝たなければならないのがつらいところだ。電車から降りるとき、私はいつも泣いて馬稷を斬っているのである。(HK)

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