Editor's Room

itoh.com の舞台ウラをリアルタイムにご報告します。

2005年11月18日(金) 「海外旅行」

「海外旅行」ってなんだか懐かしい響きのような気がします。最近、海外に行くのは、仕事関係が多いからでしょうか。私は、非常に面倒くさがりで、観光があまり好きではないため、旅行は海外でも国内でも滞在型を好みます。観光というのは、なかなか疲れるものです。観光地を巡るのも疲れるけど、「あそこも、ここも。あー、見切れない」とか考えるだけで疲れてしまう。だから、一番好きなのは、友だちを訪ねて、その家に滞在させてもらうスタイル。それで、その友だちにその地域を案内してもらう。なんといっても地元の人と一緒が一番です。まあそれも観光ですけど、でも、ガイドブック片手にテクテクというのはどうも苦手。あと好きなのは、南の島に行ってのんびり、という旅行ですかね。誰かにそう話したら、年寄りの発想だと言われました。(C)

海外旅行といっても、私の場合はアメリカに行くことがほとんどです。他の国へ旅行するために成田に行ったときでも、アメリカに行く人が羨ましかったりします。不思議なものです。私は成田空港のあの独特の雰囲気が大好きで、いろいろな人々が忙しそうに行き交う様子をぼーっと見ているだけで、なんとも言えない気分になります。そこにはそれぞれのドラマが存在しているようで、不思議な気持ちになるのです。しかし一旦飛行機に乗り込んでエコノミー席のあの狭さに直面すると、旅行に来たことを後悔し始めます。そして機内食。あればっかりは慣れませんね。でもまたどこかに行きたいなぁ。(M)

祖母は済州島出身の在日韓国人で、私が大学生のとき向こうの親戚の結婚式に出席することになった。ただ祖母はすでに70歳を超えて、一人で韓国に行かせるのは不安である。家族会議の結果、祖母の荷物持ちとブランド品大量購入阻止という重責に耐えられる唯一の人材として私が選ばれた。「他は忙しいから文系の大学生でいつもダラダラしているあいつしかいない」というわけだ。祖母と二人で済州島に飛び、結婚式に出席し、同世代の親戚に博物館に連れて行ってもらい、その親戚の友達を含めて街で遊んだり、日本語も話せる叔父にカラオケ(演歌)のデュエットを強要されたりしたのだが、済州の街から車で30分くらいの漁村にある別の親戚の家に行ったときのことが一番印象に残っている。帰りがけ車に乗った私に窓越しに親戚のおばさんがお小遣いを渡したところ、祖母が私の手からそれを奪って韓国語で「余計なことするんじゃないわよ」みたいなことを怒鳴って窓の外に投げ捨てる。投げ捨てられたお金を拾ったおばさんは祖母に「あんたに渡したんじゃないから手出しするんじゃないよ」と怒鳴って私に投げ返し、祖母がまた放り投げる。5回くらいその繰り返しは続きようやく祖母が折れたのだが、挟まれた私はオロオロするばかりであった。済州島は火山島で農業がほとんどできないため、歴史的に男よりも女性が海女として家族を支えていただけあって女性の強さは半端ではない。日本だと笑いながら遠慮しあうシーンが、ここではつばを飛ばして鬼の形相でするのである。済州島の女性、そして私の祖母の強さをまざまざと見せつけられた。強い祖母はそれから1年も経たないうちに亡くなってしまったが、祖母の最後の旅行にただ一人付き合えた孫として、一番印象に残っている海外旅行である。(HK)

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