コーチの勉強では、非常に細かい観察の方法を学びます。でも最後は、あなたがどう感じるかが大事なんです。頭で「こうしゃべろう」なんて思っているのでは間に合わない。最終的には、フィーリングが大事。
例えば講演というのは、ある程度用意したことをしゃべる。でも実を言うと今日は、用意したことは何も話さなかった。話そうと思っていたことはいくつかありますけれど、皆さんを見ていて、いくつか話して、全員ではないけれど「ああ、こういうことに興味のある人がいるんだな」とか「こういうところでは嫌な顔をするんだな」とか、いろいろ見えるわけです。そして、それに相対しながらインタラクティブにコミュニケーションを作っていく。大事なのは直感です。直感にどのくらい信頼が置けるかということが、会話の中で何より重要なんです。
過去のデータベースからどんどん情報を引いてきて、未来を予測しながら今という状況に対応していく。会話をすることが、いかに脳を刺激するかわかりますか? 年を取ってから胡桃くりくりやってもダメなんです。年を取ったら会話を続けていかないと、脳は退化してしまいます。だからしゃべる相手が欲しい。仲間が欲しい。脳を鍛えたいから。
僕らは、何回も言いますけれど生存確率を上げたいんです。最終的には、生き延びるために脳を鍛えていたい。脳をどんどん大きくしたい。それは何によってなされるかというと、唯一、会話です。算数の計算問題や図形問題を解くより、周りにわからんちんの一人か二人いるほうがずっといいんです。あなたの周りに、わけのわかんない人、いるでしょう? この人何でいるんだろう、こいつがいなきゃ会社はもっと楽しいのになっていう人。そういう人の存在は、脳に刺激を与えます。だから、あなたにとっては苦痛でも、あなたの子孫にとってはいいんです。脳が発達して、次の世代は脳が大きくなります。そういう意味では価値があるかもしれない。
僕は、子どもが生まれたときは感動しました。生まれたと聞いたときも感動したし、初めて見たときも感動したし、今朝起きるときも、やっぱり見て感動します。そこにいるんだな、この子がいるんだなと思うと感動する。人は、何かすると価値があると思っていますけど、本当はいるだけで価値があるんです。会話は、そこに人と一緒にいて、あぁこの人はそこにいるんだな、いることに価値があるんだな、ということを思い出す唯一のステージです。会話というものは、交わされている言葉だけではなくて、そこに集って、いるねっていう感じが最初にあるんだろうと思います。 |