itoh.com
ホーム
 
itoh.comNEWS登録
コンテンツ
「この気持ち伝えたい」ベストセラーをFlash版で!
コミュニケーションのプラットフォームを創る
コミュニケーションQ&A
ブックシェア
エディターズ・ルーム
フレンド
エディター沢田康彦氏のインタビューサイト
プロフィール
伊藤守プロフィール
お問合わせ
(c) itoh.com All Rights Reserved.
 
 ホーム > コミュニケーションQ&A > コミュニケーションQ&Aバックナンバー


コミュニケーションQ&A
バックナンバー No.1-20 No.21-40 No.41-60 No.61-80 No.81-100 No.101-120

毎週、コミュニケーションラボラトリーの中の Q&A から抜粋してご紹介します。

Q

コミュニケーションを取ることでご苦労されたことはありますか? 何をきっかけにコミュニケーションに関する会社を設立されたのですか?

A

きっかけというようなものは無いですね。よく聞かれますけど、ドラマチックなきっかけがあって何かなんて始めやしないんですよ。

「コミュニケーションでご苦労」って、これは日々ご苦労です。ほとんどうまく行きません。コミュニケーションを交わして自分の思い通りになったなんていうことは無い。ただ、目標を変えたんです。コミュニケーションを交わして相手に影響しようとか、自分をどうしようとか何かを変化させようとか、ここのところ、そういうのはやめた。変わるときは変わるだろう、と。そしてそれよりは、この一生の中で何に一番価値があるのか考えたんです。それから、もしこの世に神がいるとすれば、神様はこの一生の中で僕に何をさせたいんだろう、とか。そういうこと考えるの、好きですから。色々考えた末、みんなとは言わないけれど、好かれるとか嫌われるとかを越えたところで、人との間に親しみが感じられるような感じというものを創り出せるようになりたい、と思った。そしてそれにフォーカスを絞った。

そこに至るまでには色々な事がありました。あるとき僕が部屋でパチャパチャ本の原稿を書いてると、来るんですね、うちの息子が。ドアを閉めておいても入ってくる。そして膝の上に座って一緒にパチャパチャやる。「ちょっとだけ」とか「見るだけ」と言っていじくり回す。僕は「向こうに行かなきゃね」と、子供には嫌われたくないので奥さんを呼んで怒って、連れて行くように言うわけです。でも五分くらいすると、またノソノソ入って来る。鍵をかけるとドーンドーンとやる。それでついに怒り狂った、奥さんに。それから三十分くらい静かになったので、ほっとして音楽をかけながら原稿の続きを書いた。

そうしたら、またトーントーンと叩いてきた。「なんだ?」と聞くと、子どもが半分泣いて奥さんに手を引かれて入って来た。「入って来るなって言ったろ」「そうじゃないんだって」「なに? 遊ぶなら自分の部屋で遊ぶように言え。おもちゃだって山ほどあるんだから」「そうじゃないんだって」「なんなのよ?」「言ってごらんよ」と母親が子どもを促す。子どもが首を振ると、母親が「じゃあわたしが言うわ」。「なんだ?」って聞いたらですね、「一緒にいたいんだって」って言うんですよ。僕と一緒にいたいって言うんです。

僕ね、一緒にいたいなんて言われたこと、あまり無いから。そうなると本なんかいいんです、遅れたって。一緒にいたい。そう言われてみると、赤ん坊の頃からそうだったんですね。たまたま言葉にならなかったけど、僕が原稿を書いてるとヨチヨチして入ってきて、そばに座っていた。僕が立ち上がろうとすると、引っ張った。何でだか、よくわからなかった。でもそうじゃない。同じ部屋の中にいて、ただ一緒にいたい。お互い違うことをしていて、しゃべらない。でも一緒にいたい。これがたぶん人の気持ちとか、一緒にいるという感じで、わたしたちはそれがベースで色んな事がやれる。

何回も言いますけど、人と親しい、という感じがベースにあって、人は色んな冒険ができると思います。人のエネルギー源というのは、人との深い関わりの実感から生まれてくると思います。それが無くなってしまえば、一瞬輝いてみせたとしても、長く何かを続けることは難しいと思うんです。誰とでも、とは言わない。誰か一人でもいいんです。なにか「あ、親しいな」と感じられる、一人でいるときもどこか絆が感じられているような状態の時に、わたしたちは深く安心するでしょうし、明日に向かって何かやっていこうという動機づけにつながると思います。人を動機づけるのは、「がんばれ」とか「君もやれる」とか、そんな言葉でうまく行くわけではないんです。一瞬はうまく行くかもしれません。でも長い目で見ると、深い関わりとか信頼感とか安心感というものが、動機づけのベースになっているんだろうと思います。


↑PageTop