僕は苦節25年こういう仕事をしていますけれど、スムースな会話というものに出会ったことがありません。会話というのは、基本的にはぐじゃぐじゃですね。スムースな会話はテレビとかの中にあるものであって、生の人間の会話なんて、もうぐじゃぐじゃですよ。人間の顔をしているけど限りなく犬に近い人とか爬虫類の人とかいろいろいるわけですから、話なんかうまくいくわけが無いんです。飲み屋なんかだと、全員喋っていて誰も聞いていない。
でも、しつこいようですけれど、もし安心感を共有できたりお互いの存在を認め合うことができれば、難しい話も一瞬で済むと思います。会議や会話をスムースにいかせたいんだったら、普段から相手に「君のこと好きだ」「素敵だね」とか言い続けている必要があります。「君が今日来てくれて、僕も会社に来て良かった」とか、入り口で待っていて「一緒に会社の中に入ろうね」とか。笑ってるけど、それをしないで会話を、会話の部分だけをスムースにやろうとする、そのセコイ根性が嫌だ!
何回も言うけれど、人は関係の中に存在するので、会話だけで良い格好しようと思っても、そうはいかないってことです。相手がラーメンを頼んだときに、自分はカレー。これはダメなんです。相手がラーメンを頼んだら、僕も。相手がカレーを頼んだら、僕も。そこまで合わせる必要があるのか? ありますよ、会話をスムースにしたいんだったら。媚びへつらうわけではないんです。それは英語に直すと「ペーシング」と言います。
人と話している時は、呼吸も合わせるんです。まばたきも、うなずきも合わせて、そしてペーシングするんです。日常的にその人を理解するとかその人を感じるっていうのが続いた延長線上で会議があるわけですから、一朝一夕に会話だけ上手くいかせるなんて、上手くいかない。
でも、その体験が積まれてくると、人とうまくリズムを合わせていくことができるようになる。会話で大事なのはリズムです。相手のリズムが、ビートが感じられると、会話はすごくいい感じになります。何にも感じないまま中身だけいいことを言おうと思っても、会話はなかなかスムースに行かないものです。 |