いい質問ですね。たとえば「リンゴ」と言って「わかった?」と聞くと、「うん」って言うじゃない? でもそこで終わらせるのではなく、「いまどういうリンゴをイメージした?」と聞かなくてはいけないんです。そうすると、「赤いの」「黄色いの」となる。さらに「それで?」と聞くと、「丸いやつ」、「大きさはこのぐらい?」「違う、このぐらい」というふうに言ってくる。「それから?」「完璧にきれいな?」「違う、食いかけてるんだよ」というように言い合って、二人の間でイメージを作っていく。これが、コミュニケーションのキャッチボールといわれるものです。
まず、伝わらないんだ、というのが前提です。人は聞きたいことを聞きたいように、見たいものを見たいように見る。つまり、飛んできた情報を受け止めているのではなくて、聞きたいものを聞きたいように聞いてるんだということです。すべての人間は選択性難聴にかかっていますから。選択性難聴ってわかりますよね? 普段はほとんど耳が聞こえないおばあさんなんだけど、「おばあちゃんご飯よ」「はぁ〜い」というやつですね。同じですね、聞きたいことを聞きたいように聞くんだ、と。
もともと自分が興味の無かったものは、見えもしないし聞こえもしない。例えば自分の子供が学校に行くようになると、黄色い帽子ばかり見えます。コンピュータを買った帰りに電車に乗ると、コンピュータを持ってる人が目に付きます。そうですよね? オートバイなんて皆さんもうほとんど興味無いでしょうけど、高校生ぐらいになるとブーンて走ってるだけで「KAWASAKI」とか言いますから。それは、レセプターがある、というふうに言います。人は、聞きたいように聞き、見たいように見るということです。 |