初対面の時は窮屈なのがいいんです。初対面からすらすら話す奴は信用できない。初対面は、いらいらしたり息苦しかったりとかするのが大事。その感じを味わわないと初対面で会った意味が無い。だいたい最初からすらすら上手く話すとしたら、それは用意した答えでしょう。それじゃだめ。
結婚式で何がつまらないって、仲人と主賓の挨拶ですね。逆に一番どぎまぎしちゃうのは、最後の両家を代表しての御挨拶というやつですね。あれは楽しみのうちの一つ。なぜかって、お父さんが緊張のあまりセリフを飛ばしてしまうんです。で、前に立ってアウアウになるわけ。アウアウになっちゃって、言うこと無くなる。記憶に残ってる結婚式は全部それです。パァーってきれいに言っちゃうのは全部忘れます。これが大事なところなんです。気持ちを伝える時にすらすら言うなんて、ハリウッド映画だけですよ。現実にはそうは行かない。
以前僕の秘書をしてくれていた人の結婚式で、最後にお父さんが出てきてセリフが飛んじゃった。ウゥッて感じになって、この瞬間部屋が一つになりますね。もう他人事ではなくて、みんな、「いいから終わって」っていう感じになるじゃないですか。僕なんかは「もうちょっといて」とかって思うけど。すると、最後にお父さんが何を言ったかというと、「まきこー」って名前呼ぶんですよ。「まきこー、お嫁に行っちゃうんだねぇ。」それでおしまい。最も印象的な結婚式でした。ひとことだけですよ。
「本当の気持ちを言う」なんて、僕らは一生のうち、そうそう出会わない。僕は学校で先生にそういうの聞きたかったな、一回ぐらい。 |