例えば太ってる人は、一日に二十回くらい体重計に乗ると思い知りますよ。太ってる人がなぜ痩せないかというと、太ってるということについて認識が無いんです。僕の従兄弟が、ずっと朝ご飯を食べない不規則な生活を送っていてガリガリに痩せていたんですけども、結婚してから朝昼晩食べるものだから太っちゃったんですよ。でも、人に「太った太った」って言われても、自分じゃ全然わからなかった。それが、ある時電車に飛び乗ろうと思って走った時に、頬が揺れて、それがパッと視界に入ったんですって。見えたの、ほっぺたが。その時に彼は思った、太ってるって。――すぐ痩せましたよ。
そういうのを“フィードバック”って言うんですけど、たくさんフィードバックを受けることが、自分を知っていく上ですごく大事。うまく行かない方法は、頭の中でこねくり回すやつですね。だからいろいろいろいろこねくり回してですね、混乱の極地に入っていく、と。
僕は時々、うちの子とか甥っ子とか姪っ子とかと一緒に“かくれんぼ”するんです。大人は“かくれんぼ”、もうできない。永久に隠れるからね。子供は“かくれんぼ”を楽しめる。隠れながらわざと顔を出したりもぞもぞ動いたりする。彼らは、見つかってすごい嬉しいわけ。そこにいたんだね、っていうことがわかるから。大人になると、見つけてもらえないもんだから、仕事はこれだけやれるとか、俺はこんなに偉いとか正論吐いてるわけですよ。新橋あたりの飲み屋で、大の大人が喋ってる内容の99.99%は自慢話です。あれは“かくれんぼ”の時子供が顔出してるのと同じなんです。見つけてよ、見つけてよ、って。だから、周りにいる人は、「みっけ!」ってやるだけでいいんです。「部長、見つけたー」なんていうので、結構満足するんですよ。
人は安心したいんです、ひたすら。自分が生きてる実感が欲しい。安心するためには、たくさん食べるとか、アルコールとかタバコとかソープランドとか、あるいは人と過激にやり合うとか、そういう依存の方法ではなくて、誰かと1対1で、こう、温和な会話が創り出されれば、すごくいいでしょうね。 |